入れ歯安定剤の正しい使用は、食生活を中心としたより快適な生活の向上(QOL)に役立ちます。
入れ歯安定剤の知識をもっと深めて、快適で楽しい入れ歯ライフを送りましょう。
総入れ歯(総義歯)をお口の中で安定させるために用いるのが入れ歯安定剤です。
その弾力性と粘着性で入れ歯と顎堤(入れ歯をのせる歯肉などの口腔粘膜)をしっかり密着・固定してくれるため、使用方法さえ誤らなければ快適な入れ歯ライフを実現してくれます。
入れ歯安定剤には大きく分けて、パウダータイプ・クリームタイプ・クッションタイプ・シートタイプの4種類があり、特徴や欠点もそれぞれです。
これから個別に案内していきますので、快適な入れ歯ライフの参考にぜひご利用ください。
パウダータイプの入れ歯安定剤には、
国内では新ファストンとポリグリップ®パウダー無添加があり、2つともお勧めの入れ歯安定剤です。 使い勝手は良好ですが、増粘性はクリームタイプのものと比べて劣ります。
ポリグリップパウダーが合成系の増粘剤(CMC:カルボキシメチルセルロースナトリウム、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体塩)を使用しているに対し、歯医者さんによって開発されたファストンは天然の増粘剤(カラヤガム)を使用しており、開発者の坂梨先生の徹底したこだわりから、防腐剤や着色剤は一切添加されていません。
そのこだわりようは水と理想的に反応するパウダーの大きさの研究にまで及んでいます。ごくわずかですが酸味臭があります。
ポリグリップパウダー無添加の方は無味・無臭です。
どちらの入れ歯安定剤も快適に使用するためには、熟練が必要ですが、慣れてしまえば大した問題ではありません。
入れ歯の内面に薄く均一にパウダーを振りかけるようにしてお使いください。
両方試して使用感の良い方を選ぶことも大切です。
クリームタイプの入れ歯安定剤には、国内では新ポリグリップS、新ポリグリップ無添加、新ポリグリップV、タフグリップクリーム(無添加)、新ライオデント、コレクトクリームなど多数発売されてます。
これらの中では、着色料・香料を含まない新ポリグリップ無添加、タフグリップクリーム(無添加)がお勧めです。また、白色ワセリンを使用していない新ライオデントの完成度も素晴らしいです。
増粘剤としてCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)やメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体塩がほとんどの製品で使われています。ほぼ無味無臭ですが、使用中にクリーム(白色ワセリンなど)が溶け出てくる溶出感があります。
増粘性はパウダータイプよりも高く新ポリグリップEXが最も増粘性があります。
入れ歯を快適に使用するためには、入れ歯内面にグリンピース大の大きさのクリームを数箇所出し、入れ歯内面全体に薄くまんべんなく伸ばしてお使いください。
YouTube デンチャーTV クリームタイプの入れ歯安定剤の使用方法 ▼
院長制作! YouTube デンチャーTVもぜひご覧ください >>
クッションタイプの入れ歯安定剤も、国内ではポリデント、新ライオデント、新ライオデントピンク、タフグリップクッション、やわらかタフグリップ、クッションコレクト、コレクトソフトAなど多数発売されてます。
ポリデント、新ライオデント、新ライオデントピンクにはほとんど粘着力はありませんが、タフグリップクッション、やわらかタフグリップ、クッションコレクト、コレクトソフトAには強力な粘着力があります。
ほとんどのものが使い始めの際に、ボンド系の臭いと僅かながら舌に対する刺激感があります。
クッション材として使用される酢酸ビニル樹脂(チューインガムなどに使用)は、弾力性にとても優れており、入れ歯のあたりを緩和してくれます。
ただし、材質の性質上、入れ歯の内面全体に薄く均一に貼り付けることが困難なため、安易に長期間使用すると噛み合わせに重篤な悪影響が出ることがあります。
クッションタイプの入れ歯安定剤は、あくまでも短期的な使用に留めておくことをお勧めします。
残念ながらクッションタイプの入れ歯安定剤を発売している国は世界中で日本だけです。また、日本において最も売れているのもクッションタイプの入れ歯安定剤ということも事実です。
そして、歯科医院で最もお勧めしない入れ歯安定剤がこのタイプであるということも事実なのです。
シートタイプの入れ歯安定剤には、国内ではタッチコレクトⅡとシーボンドが発売されてます。シートタイプは手軽に使用できる点がメリットです。
タッチコレクトⅡはシートの主成分がCMCのため最終的に溶けてなくなります。
シーボンドの方は溶けないシートのため、長期間継続して使用すると咬み合せが悪くなり、アゴの土手(顎堤:歯ぐきの部分)が吸収(なくなる)したりすることがあるため注意が必要です。
両方とも増粘性はそれほど強くありません。
入れ歯を使用されている方はこれから先も入れ歯を使用しなければなりません。
クッションタイプの入れ歯安定剤は応急的な短期間の利用は良いのですが、長期間の利用は歯科医師としてあまりお勧めできません。
クッションタイプの入れ歯安定剤を利用している方は、この案内をご覧になり他のタイプの入れ歯安定剤のご利用をご検討ください。
歯科医院でご自身に最適な入れ歯安定剤の相談をされても良いと思います。
(入れ歯に精通している歯科医院に相談しましょう)
入れ歯安定剤の使用について多いトラブルは下の図の右側のケースです!
最悪の場合、入れ歯が装着できなくなってしまうこともあるため、思い当たる方は早めに歯科医院に相談されることをお勧めします。
アゴのやせる原因を加齢や体重減少によるものだと思われている方がおられます。
確かにそれも一理あるのですが、最大の理由は入れ歯安定剤に依存し過ぎた無理な入れ歯の使用にあります。
つまり過度な噛み過ぎがアゴの骨にダメージを与え続け骨が吸収してしまうのです。
ですから正しい入れ歯および入れ歯安定剤の使い方をすることが、アゴをやせさせない一番の秘訣だということを知ってください。
余談になりますが、
どうも日本という国では入れ歯安定剤を使っていると歯医者に怒られる??
というような風潮があるらしく、大勢の患者さんが入れ歯安定剤の使用を隠しているようです。
話をもとに戻して、
もっとも注意すべき入れ歯安定剤のトラブルについてご説明します。
入れ歯が合っていないのに、安易な気持ちで粘着系のクッションタイプの入れ歯安定剤を長期間に渡って使用してしまった場合のお話です。
クッションタイプの入れ歯安定剤はどうしても厚みが出てしまいます。
そのため、入れ歯内面の安定剤の厚みは毎回不均衡になるため、咬み合せ自体が悪くなってきます。
そして、咬み合せの悪さを補うために、入れ歯安定剤の弾力や粘着力にますます依存する傾向が強くなってしまいます。
じつは、これが怖いのです。
患者さん自身は、痛くないし、硬いものでも何でも良く噛めると錯覚をしているため、口腔内の変化や咬み合せの狂いにはまったく自覚症状がありません。
やがて無意識のうちに咬み合せの力(咬合力)が強く出過ぎるようになります。 それが原因で、知らず知らずのうちにアゴの土手(顎堤:歯ぐきの部分)に痛みを伴わない微弱な炎症が波及し続けることになります。
その結果、アゴの土手が高度に吸収して無くなってしまうという恐ろしい現象が起こるのです。
顕著な場合、山の頂のような形態をしていたアゴの土手が、わずか数年足らずで吸収して無くなり、陥没したアゴの土手になってしまったというケースもあります。
入れ歯を入れることさえ困難な状況になってしまう方もいるのです。
クッションタイプの入れ歯安定剤を利用されている方はくれぐれもご注意ください。
歯科医院で製作した入れ歯が、
痛かったり・合わなくなった場合は、必ず歯科医院にご相談ください。
それが、入れ歯と長く付き合うための秘訣です。
◎大森駅山王西口駅前の大規模な道路拡幅工事後も魅力ある山王口商店会のために尽力致します! 大森駅山王口商店会 副会長 内田将士
◎おかげをもちまして、内田歯科医院は開業50周年を迎えることができました。内田歯科医院・ 入れ歯研究所
日本ボディビル連盟公認一級指導員 内田将士